Yamamotoの日記

Yale SOM MBA、金融工学、技術関係の記事を書きたいです

CAPMは成り立つのか?

まとめ

市場indexから推定した個別株のβは、決定係数が低く信頼性が低い。日本に於いては、市場にある8割の個別株は決定係数が0.33以下。リターンをマーケットに対する超過リスクで説明するというCAPM理論は、少なくとも実証レベルでは成り立ってなさそうだ。

決定係数(R2)の分布

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決定係数の分布

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積分

東証1部上場企業の5 years, Monthly βを取ってみた。当社内では、決定係数が0.1未満のβは信頼性が低く、Valuation時のCoE推定には使えないとされているのだが、決定係数のボリュームゾーンは0.1以下で、累積でもほとんどの企業のβの決定係数は0.1未満だ。。。ほとんどのデータの信頼性が低いということになってしまう。。。笑

そもそもCAPMとは

投資家が期待するリターンは、マーケットの(超過)リターンで説明できるとする理論1である。 CAPMの前提2 は結構厳しい。これだけ厳しい前提を置いて初めて、個別株式のリターンをマーケットの超過リターンの一次式によって説明することができる。 * 全投資家はリスク回避的で期待効用の最大化を望む。(効用関数が上に凸、投資家は投資価値の期待値/分散だけを見て投資する) * 投資期間は1期だけ。 * 投資家はポートフォリオを構築可能 * 投資家は無リスク利子率で無制限に借入ができる。 * すべての投資家は同じ情報を持つ。 * 完全市場である。

結論

そもそも完全市場じゃないし、二期間で終わる経済じゃない。投資家は期待値と分散だけで投資内容を決めないし、すべての投資家がポートフォリオが組めるわけではない。そして完全市場じゃない。

こんなに成り立たない前提を持った理論をもとに、数百~数千億円単位の投資の意思決定をするなんて恐ろしいことだと思うが、日本ではこれが一般的なので、市場にはたくさんのミスプライシングがありそうだ。